top of page

Past Exhibitions  ~2016

​大槻香奈 個展

神なき世界のおまもり

2016年12月13日(火)~12月28日(水)

12~19時開廊

◆​レセプションパーティー

12月13日(火) 19~21時

※不定期の休廊日がございます。

16日(金)~20日(火)、26日(月)

日程表でご確認ください。

会場:創治朗 -contemporary art gallery-

664-0851

兵庫県伊丹市中央6-1-33 中本ビル2F

(阪急伊丹より徒歩約6分・JR伊丹より徒歩約9分)​

tel: 072-773-3910

mail:gallerysojiro@gmail.com

web: http://gallerysojiro.wix.com/sojiro

twitter: @sojiroARTprdc

■趣旨

このたび創治朗では、大槻香奈(Kana Ohtsuki b.1984) 個展『神なき世界のおまもり』を開催いたします。

弊廊では2015年末~2016年年始にかけての個展『おやすみからのおはよう』から1年を経て、2回目の個展開催になります。

2015年末の東京での大規模個展『わたしを忘れないで。』で語られた<中心を失った世界>という表現テーマは、この1年をかけて
掘り下げられその先の展開が模索され、アップデートが施されてきました。
今展は今年11月に開催された東京 白白庵での個展『空家と蛹器』の要素を踏まえながら、

1年前から展開している路線を再構成する試みとなります。

 

2016年の作品づくりの中で、大槻のもっとも代表的なモチーフである少女ポートレートは、

従来と比べて絵具の材料的質感やランダムな描線、作画過程で偶然的に生じる効果などを前面に出し、
不確定的な雰囲気をもった“曖昧輪郭線”という新しいシリーズが登場しました。
また、さなぎ=少女 というはっきりした主要モチーフが作品に占める位置もやや控えめになり、

かわりに<蛹と器と家>という 容器的なもの/うつわとなるもの/空虚な空間を内包するもの を描くことが次第に前景化しました。

 

それは絵画世界の中で中心の点に立つ主人公的存在の後退とも見え、

風が吹き抜けるような<からになった>空間そのものの存在を強く感じさせます。

われわれ見る者を絵画世界の中へと導き入れる存在が希薄になったその世界では、

そもそも世界全体に統一性をもたらしているもの=神も、もはやそこにはいないことがほのめかされています。

 

神の気配の断片である<おまもり>だけがかろうじて残っている場所。
おまもりにとっての中心であり力の供給源であったはずの神が去った、からになった世界でおまもりが果たせる役割とは何なのか。
今ではぬけがらとなったおまもりには、わたしたち一人一人がみずからその拠り所を与えるしかないのではないか。

 

こうした考えをめぐる中から、大槻が発見し、かたちにしてきたものを集約します。

この機会にぜひご高覧いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

——

■大槻香奈 Kana Ohtsuki

 

1984 年生まれ。東京と京都を拠点に活動する美術作家。2007 年 より活動をスタートし、国内外問わず様々な展覧会に参加。 現代日本を「蛹」的に捉え、そこで生まれゆくものと死に ゆくもの、またそれらを内包する世界の姿を客観的視点で 描く事を試みている。
代表的シリーズであるアクリルで描かれた少女のポート レートをはじめ、抽象的表現、立体、イラストレーション など、年々表現の幅を広げている。
WEB SITE:http://ohtsuki.rillfu.com

□≪invite≫ 606 × 455 mm / キャンバス、油彩、パステル、スプレー / 2016年

亜鶴 個展“Da Primitive”

会期:2016年11月18(金)~12月3日(土) 

 

火~土 12~19時開廊 / 日・月 休廊

(※今展より、以前の金土日 開廊から、火~土曜の開廊日程に変更になります。ご注意ください。)

レセプションパーティー:11月18日(金) 18時

会場:創治朗 -contemporary art gallery-

664-0851 兵庫県伊丹市中央6-1-33 中本ビル2F

tel: 072-773-3910

mail:gallerysojiro@gmail.com

web: http://gallerysojiro.wix.com/sojiro

twitter: @sojiroARTprdc

■趣旨

このたび創治朗では、亜鶴(Azu, b.1991)個展“Da Primitive”を開催いたします。

強い筆触と分厚い質感に満ちた塗りで走り描きのようなストロークを使い、筆触と色面の中に溶解していくような人物の顔をモチーフとしたポートレート作品を繰り返し描いている亜鶴は、

「社会との関係性を考えた上で自己の存在意義を再構築すること」を制作のテーマに据えています。

ポートレートの制作背景で亜鶴が考えている人間像は、SNS等で普及した自撮り文化などにみられる個人の自己内面に限定的に由来した承認欲求ではなく、

他者と向き合い、その関係性の中で自己と向き合う行為、社会との関係性を持つことにより発生する「社会の中の個」を表現することを意図しています。

それは自己という枠組みを閉域として閉じこもるのではなく、多様な関係の網目、様々に作用し合う諸関係の中に身を置き、常にそれらの作用を受けながら変容する、不確かに揺れ動くものとして自己/各個人を捉え、そのような人間の姿を絵画画面に定着させようとする試みです。

情報の行き交いの高度化のために社会という外側からの意識への干渉、または自己からの発信、さららに絶えず傍らを通り過ぎていく拾いきれない余剰情報など、それらの相互作用の絶え間ない発生が日常に浸透し、そうした現象の恒常化のために自己を決定づける核が何であるのか不確かな認識しか持てないことも多いであろう現在の中で、人がアイデンティティと呼びうるものを持つことはどういうことなのか。

ときに像を結んだり、ときに曖昧に揺らいだりする人間の存在を見つめ、その現象をポートレートという絵画のフォーマットで捉えることを実践しています。

この機会にぜひご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

潤inoue. Exhibition “block”

2016. 11/11. 12. 13

会期:2016年11月11(金)、12(土)、13日(日) 

12~19時 開廊

レセプションパーティー:11月12日(土) 18時

会場:創治朗 -contemporary art gallery-

664-0851 兵庫県伊丹市中央6-1-33 中本ビル2F

tel: 072-773-3910

mail:gallerysojiro@gmail.com

web: http://gallerysojiro.wix.com/sojiro

twitter: @sojiroARTprdc

□メインビジュアル作品:「FAIR」 730 × 730 mm acrilyc on wood panel 2016

抑圧のシュルレアリスム。

短絡に現代社会への皮肉、警告、侮蔑ととること無かれ。

それはあまりに安易だ。

潤inoue. が獲得した世界観は、

ヒトが当たり前に持つ(しかし深い所に在って判り難い)感覚を、

ユーモアという刺激を以て提示している事に気付かれよ。

その温かい奇怪さに与えられるのは、

今や普遍性を獲得している言葉「シュルレアリスム」こそがふさわしい。

 

――レントゲンヴェルケ:池内務

わたしたちは、顔を見せ合っているうちは中身を隠し、つながり合わない
顔が隠れれば、隠れながら見るのは、それぞれ自分自身の内部だけ
自分の内部にしか目を向けていない人間は、中身をこの上なく洗練するのだろうか?
自分の外へと拡がってゆくことを拒んだ人間は、どこへでも被ってゆける自室の中に宇宙を見つけているのだろうか?

 

――創治朗:二見正大

■趣旨

このたび創治朗では、潤inoue.(Jun Inoue. b.1980)個展を開催いたします。

 

カエルやキューブ状の浮遊する島々などをモチーフにイマジナリーな情景を描くことで知られる潤inoue. は、<人間観察>を絵画制作の根本的動機としており、前述のカエルや島々は、自画像や群衆の姿の変換形態であり、その中に寓意をしのばせた作品世界を構築してきました。

 

作品の中では、これまで潤inoue.自身が直接目にしてきた不特定多数の人々のコミュニケーションや行動の様式から、全般的に観察できる特徴を見つけ出し、抽出しています。

そこで観察された特徴とは、顔が見える関係性と顔の見えない関係性の落差、

または、顔のある=個人性のある態度や意見は、もっぱら顔のない=匿名の状態でこそ表明されている、と要約できるものです。

このため人々の姿は社会的テリトリーを区分する「住居」「建物」に頭部を覆われた姿で描かれました。

 

街の一区画を現す<ブロック>という単位がありますが、今展“block”における群衆図では、いわば一人一人が1ブロックとなっています。

ここでの<ブロック>は、街の区画という社会化した部分を含んでおらず、個人の小さな占有空間となっており、関係性の遮断の意味でのブロックも含意します。

 

こうした状況は、無際限にコミュニケーション機会を増幅する現代の通信ツールの発達によって逆説的に生身の関係性の衰退が起きたようにも思えますが、一方では誰もが自己意識のまわりを個々の関心だけで埋め尽くした空間=自室に近いものを常時携行できる技術が普及したとも考えられます。

 

潤inoue. は、そうした自己意識に閉ざされた領域で特定の関心が追究されつづけることで生まれるクリエイティビティもありえると考えました。

外部への拡張性とつながりを犠牲にする代わりに、個の特定の関心を追究・凝視し、特殊な能力を獲得する場合がある。

今展ではこうした現在的状況をサンプリングし、個体の閉域の中で関心や技術を蓄積することが容易になったことで今後生まれる創造的可能性はあるのかを絵画表現において探求します。

 

この機会にぜひご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

(text:二見正大/創治朗ディレクター)

■潤inoue. Jun Inoue. 

1980 大阪生まれ

2003 大阪芸術大学卒業

2009 サコダアートギャラリー所属

 

主な展覧会

2016   < Infinity Japan > Miramar Garden Taipei(台湾)

           < 潤inoue. × 柴田早穂 > FORUM ART SHOP(東京)

           < KOBE ART MARCHE 2016 > KOBE MERIKEN PARK ORIENTAL HOTEL(兵庫)

2015   < 潤inoue.exhibition 1.5 > 新宿タカシマヤ A.P.J (東京)

           < Young Art Taipei 2015 >  Sheraton Grande Taipei (台湾)

           < Mark Fell / NHKyx's POTATO TOUR >  New Osaka Hotel Shinsaibashi (大阪)

           < KOBE ART MARCHE 2015 > KOBE MERIKEN PARK ORIENTAL HOTEL (兵庫)

           < The art fair plus ultra 2015 > 青山スパイラルガーデン(東京)

2014   < AHAF HONG KONG 2014 > MARCO POLO HONG KONG HOTEL (香港)

           < KYOTO ART FAIR 2014 > みやこめっせ (京都)

           < AHAF SEOUL 2014 > LOTTE HOTEL SEOUL (韓国)

           < 潤inoue.exhibition > FORUM ART SHOP (東京)

           < KOBE ART MARCHE 2014 > KOBE MERIKEN PARK ORIENTAL HOTEL (兵庫)

           < 東美アートフェア 2014 > Tokyo Art Club (東京)

2013   < 潤inoue.exhibition > Sakoda Art Gallery (兵庫)

           < ma-ru ~ remake.love.anthropology ~ > WHO'S WHO Gallery (大阪)

           < KOBE ART MARCHE 2013 > KOBE MERIKEN PARK ORIENTAL HOTEL (兵庫)

           < BODAIJU EXPO 2 > New Osaka Hotel Shinsaibashi (大阪)

萩岡美知子 個展

 

Michiko Hagioka

Solo Exhibition

 

“rhythm”

2016.8.28 sun - 9.18 sun

■萩岡美知子 個展 “rhythm”
2016.8.28 sun - 9.18 sun
金土日 12~19時 開廊(月~木曜 休廊)

レセプションパーティー:8月28日(日) 17時~

会場: 創治朗 -contemporary art gallery-
664-0851 兵庫県伊丹市中央6-1-33 中本ビル2F

tel: 072-773-3910
mail: gallerysojiro@gmail.com
web: http://gallerysojiro.wix.com/sojiro
twitter: https://twitter.com/sojiroARTprdc

■趣旨

このたび創治朗では、萩岡美知子(Michiko Hagioka, b.1985)の個展を開催いたします。

昨年のアートフェア、神戸アートマルシェ2015とULTRA2015、また本年に入って創治朗開廊一周年記念展にて徐々に作品を発表してきた萩岡ですが、いよいよ今回、近年の活動を総括する個展を開催する運びとなりました。

萩岡は、幼少時より油彩およびデッサンの正統的な絵画技術を身に付け、また、書道にも親しんできました。

2008年には京都精華大学マンガ学科カートゥーンコースを卒業し、これまでの各経験値を複合し絵画、書道、漫画の要素をふるいにかけた独自の描線・画面構築の方法を発想しました。

現在は作品の支持体はキャンバスであるものの、絵具と絵筆ではなく油性・水性含むマーカーペンを、もっとも主要な画材としています。

萩岡にとってマーカーペンは、描画行為に対して求める、手の疾走感、筆圧の微妙な変化の描線への反映、その描線の刻むエッジーな表現など、いわば描き手の体のリズム感覚をもっともダイレクトに反映できる描画ツールとして選んでいます。

制作全般のテーマとして、普遍的な日常のいとなみに感じる美しさを、現代の街並みの風景を描くことを介して表現しようと試みています。

今展はタイトルのとおり“rhythm”=リズムをテーマとし、萩岡が日常生活の中で触れているリズム――あるとき耳にしたクラブミュージックのリズムや繰り返す日々が刻む時間のリズムから着想して、現代の暮らしのさまざまな局面に持続しているリズムのなかから、「淡々と過ぎてゆく事実」の描出を試みます。

今展において考えられている「リズム」とは、生命が現れては活動しやがて死に終着して消えゆくまでを一拍としてとらえるような、俯瞰的または大局的な、無常観に近い感覚を帯びており、そうした生から死へのリズムが無数に、淡々と繰り返されてゆくさまこそが日常であるという認識にもとづいています。

刻一刻と命あるものが生まれては消えてゆく――。人々の日常の中では必ずしも十全に直視されておらず、また直接目に触れるような場には現れていないが確かに存在しているそうした事実を、都市の日常風景に見出される建物のかたちのリズム、人々の雑踏のリズム、現代文明の暮らしの中のリズムに重ね合わせて描き出し、

そこから遥かな宇宙的普遍性の領域に向かって飛び立とうとするように、仏教の曼荼羅を参照した形態のリズムを描いた作品へとリンクさせます。

さまざなアプローチを試みていますが、全体を貫いているのは、生命にとって望ましいリズムを捉えること、そのリズムを整えることが生命の行方をうまく運ぶことという考えです。

一見して喧騒や工業音や消費社会の速いサイクル、またあらゆる管理体制に覆われ閉塞をきわめたようにも見える現代都市の風景のなかから、生命がその本質的リズムを見失わずに生き生きとするための手がかりを探る美術表現を追求しました。

ぜひご高覧いただけますようよろしくお願い申し上げます。

(text:二見正大)

――

■萩岡美知子 Michiko Hagioka

1985 神戸生まれ

2008 京都精華大学マンガ学科 カートゥーン(諷刺マンガ)専攻卒業

 

[作品発表歴]

2016 グループ展『to be 様々なる意匠 or not to be 様々なる意匠』[創治朗 / 兵庫]

2015 <個展>『DRAWING EXHIBITION』 [Three Star Kyoto Event Gallery / 京都]

   アートフェア 神戸アートマルシェ2015 [メリケンパークオリエンタルホテル / 神戸]

   アートフェア ULTRA2015 [Spiral / 東京]

   長田区もの干し竿ギャラリーにてインスタレーション [神戸]

   とんぼりワッショイにてライブペイント [大阪 道頓堀]

   名村大人遊園地にてライブペイント [大阪 中之島]

2014 あべの雑貨タウンにて招待ライブドローイング/あべのハルカス [大阪]

   京都国際映画祭特設ブース出展

   master piece×カジカジ20th記念コンペにて準グランプリ受賞

   ホルベイン 淡海の夢 2014風景画展 受賞

2013 SUMMER SONIC SONICART招待出展 SNIFF OUT [大阪]

   <個展>『ふへん』(HANARART共催イベント)[Aran café / 奈良]

2012 SUMMER SONIC SONICART(グランプリ受賞)[東京]

   GEISAI [東京]

2011 <個展>『Drop me off here』 [ART COCKTAIL / 南森町]

   GEISAI petit [東京]

2010 萩岡美知子初個展 [ART COCKTAIL / 中津]

2009 Desingh Festa Tokyo [東京]

2008 『∞アート』 [トンカ書店/神戸]

創治朗 開廊一周年記念展

【 to be 様々なる意匠 or not to be 様々なる意匠 】

■出展作家: 西ノ田/海野由佳/中山いくみ/竹村寬来/大槻香奈/松井コーヘー/大澤悠/イセ川ヤスタカ/仲順れい/潤inoue./萩岡美知子/藤村幹/升田学/石野平四郎/神野翼

会期: 2016年6月18日(土)~7月10日(日)

開廊日時: 金~日曜 12~19時

※初日6月18日(土)のみ、16時オープン

□レセプションパーティー: 会期初日 6月18日(土) 18時~

■トークショー: 7月10日(日) 18:00開場 / 18:30開始

黒瀬陽平(美術批評家)× 黒嵜想(批評家)× 二見正大(創治朗ディレクター)

会場: 創治朗 -contemporary art gallery-

664-0851 兵庫県伊丹市中央6-1-33 中本ビル2F

tel: 072-773-3910

mail: gallerysojiro@gmail.com

web: http://gallerysojiro.wix.com/sojiro

twitter: https://twitter.com/sojiroARTprdc

■趣旨


このたび創治朗では、開廊一周年記念グループ展「to be 様々なる意匠 or not to be 様々なる意匠」を開催いたします。


今展では昨年夏の開廊以来、個展を開催した作家、そして以前から交流の深い作家も加わり、計15名の作家の小作品によるグループ展となります。

この長く奇異な展覧会名は、シェイクスピア「ハムレット」のあまりにも有名な台詞「to be or not to be」と、
近代化以降の日本の批評を基礎づけた小林秀雄「様々なる意匠」から合わせて引用したものです。

「様々なる意匠(=単なるさまざまなデザインが見かけの多様性としてあるだけ)」であってよいのか。またはそうでなくあるべきか。
ここには切実な問いがあります。

ここに集合する各人の作風を一望する限りでは、互いに明確な共有基盤を持たず、散逸していて直接には交わらないであろう、ある種ランダムな群れとして15人の出展作家群が存在していることがうかがわれます。
各々がうつろな空間に浮遊する孤独な原子という状態しかとりえず、互いに確固とした共通認識や連帯を築きうる基盤は保証されていない。
それぞればらばらに拡散した作風たち。

このような存在の様式は、あらためて強調するまでもなく、近代以降、消費社会化・情報社会化の進路を進み続けるわたしたちの現実の生の様式そのものとシンクロしています。

今やわたしたちは他者との対話や連帯を奇跡のように望むしかなく、わたしたちにとって最も濃密に感じることができるものこそは他ならぬ何も掴めない「空虚」であるということ。このような困難を経ない限り、作品は生まれえないということ。
そうした状況に展望をもたらす術はあるのかという視点からこの題名が着想されました。

この初期条件から展望を探っていくには、全体への統率という旧時代的指針ではなく、まず個が重んじられなければなりません。
個が個別なままにあること。
かつ、個々の存在が、各作家の目指す制作が、どこからやってきたのかということ、どのような文脈的来歴が見出せるかということ。

互いに向こうから来てあちらへ通過していくもののように様々に存在している、呼びかけ合えるのか定かでない存在同士が行き交う場。

そこでは互いが秘めている、それぞれの背後に広がる個別な世界を相互に提示できることが、対話と探求への数少ない手掛かりとなります。
われわれはどのような意図、どのような足下のレールの上で各々の道を歩んでいるのか?

今展の試みが見ようとするのは、そのような様々に行き交っていく個体たちが、様々な解散としてフェイドアウトするのではなく、
各々の様々な姿を発見し語りかけ合えるのかという問いです。

ぜひご高覧いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

 

(text:二見正大/創治朗ディレクター)

■松井コーヘー 個展 「目の中のミジンコ展 ~家庭にある風景~」

 

会期:2016年4月1日(金)~4月30日(土)

 

開廊日時: 金~日曜 12~19時

 

 

□レセプションパーティー: 会期初日 4月1日(金) 19時~

 

 

会場: 創治朗 -contemporary art gallery-

664-0851 兵庫県伊丹市中央6-1-33 中本ビル2F

 

tel: 072-773-3910

mail: gallerysojiro@gmail.com

web: http://gallerysojiro.wix.com/sojiro

 

 

 

――

 

 

 

■趣旨


このたび創治朗では、松井コーヘー(Kohei Matsui, b.1979)の個展を開催いたします。

 

松井氏は、旧宝塚造形芸術大学在学中より、元具体美術協会の嶋本昭三氏に師事し、海外各国での個展・グループ展や共同制作等を多数経験してきました。

卒業を経て独立後、デザインおよびアートディレクションを手掛ける株式会社・松意匠店を自ら経営する傍ら、美術作品としての絵画の制作も続行しています。また、ワークショップの主催、絵本の出版等も行い、その活動は多岐に渡っています。

 

今展での構成としては、松井氏自身の家庭の中で、子どもの目線にシンクロしながら見た様々な生活用品(茶道具や子ども用の玩具)をモチーフにしながら、無意識の中に根を張っていく生活の変化を見つめるための作品群となっています。松井氏は美術家として自身の作品を制作する際、この時代に確かに生きた人やモノを作品化すること、自然的で普遍的な形を表現すること、そしてあらゆる日常の縛りから解放されることを理想としています。

 

日常の縛りを解く。しかしそれは日常を転覆させたり逸脱したりするためではありません。松井氏にとってアートは、あくまで身近なモノやコトから影響される中で生まれます。

子どもの目線の純真さが見つけ出す、普段なんとも思わず接していた生活用品類への見方の変化、新鮮な発見。そこに美術作家としての松井コーヘー自身の目線が重なっていきます。

 

たとえば創作家がいつもなにかを作りたいと思いながら世界を眺めたり、なにかの見方を変えてみたりする瞬間の、さりげない存在への敏感さ。その感覚は、子どもの頃にはいつも視界の中に満ち満ちていたものだったのかもしれません。

松井氏が今展で提案するのは、その感覚をいつも抱いていた頃を思い返しながら、もう一度日常を見つめてみることです。子どもに完璧には戻れないから、今の自分自身の目で。

 

「目の中のミジンコ」とは、誰しもふとしたときに気が付くような、視界の中に浮かんで泳ぎ回っている、うっすらした微細な存在。

目の中のミジンコが居る視界とは、ほかの誰でもない、自分自身や、あなた自身の視界です。

その、誰にとっても今の自分自身の目で世界をとらえている前提で、けれども子どもの頃以来ずっと忘れていたかもしれないあの感覚に、シンクロさせながら世界を観察してみます。

そのとききっと、いつもと変わらないはずの日常の中から、隠れていた素敵な発見がおとずれることでしょう。

 

 

(text:二見正大/創治朗ディレクター)

 

 

 

――

 

 

 

■松井コーヘー Kohei Matsui

 

1979年 兵庫県伊丹市生まれ

1998年 嶋本昭三に師事

1999年以降 日本のみならず海外で個展・グループ展を多数開催。

 

アートディレクターやワークショップ開催・絵本出版など多才であり多方面に活躍。

株式会社松意匠店 代表取締役:松井耕平

http://www.matsuisyoten.com/

http://kohei-matsui.com/

 

 

 

【主な展覧会】

2015  個展「うしろみながらまえへのすゝめ」(東京都港区)  個展「余命45年展」(神戸市)

2012  福島子どもワークショップ(福島県川俣町) 「SPOON ART FAIR」出品(香港、韓国)

2011  モトコーART Train 出品(神戸市)  個展「さシすせそ展」(東京都中央区)

2010  2人展「沈偉群×松井コーヘー」(東京都中央区)

    個展「松井コーヘーのわけわけのむこうがわ」展(京都市)

     「さんごの絵を描こう」ワークショップ(マーシャル諸島)     

2009  此花アートプロジェクト 5カ所に壁画制作(大阪市)

    個展「松井コーヘーのスーハー展」(京都市)

2008  此花アートプロジェクト20m壁画 完成イベント(大阪市)

     JPEGイベント招待作家としてパフォーマンス・展覧会(ウクライナ)

2007    2人展「SHIZUNDENDEN SINKING」(大阪市)     

    中・日芸術障害者展 企画・出品(北京)

    個展「しまさんと太陽がまわってるてん」(大阪市)

2006    六本木ヒルズ 「one night theater」パーティー映像作品発表(東京都)

     あんなー家に絵をかきたいねん〜ここでもいのちを考える展実行委員長(伊丹市)

     奈良室生 芸術の森野外展(奈良県)    日中現代芸術展出品・企画(北京)

1999   「第27回現代芸術国際AU展」新人作家賞受賞(東京都)

     アラン・カプロー主催、美術パフォーマンス参加(台湾)

     うるま保育園特別絵画講師 - 2001(西宮市)

    個展・パフォーマンス「松井耕平展」(フィンランド) 

 

 

 

【書籍出版】

絵本「きょんにちは」(2005年 新風社)

絵本「しまさん」(2007年 JMIFA)

 

 

 

 

 

■大槻香奈 個展 『おやすみからのおはよう』

 

会期:2015.12.19 sat - 2016.1.24 sun

※年始の 2016.1.1 - 1.3 は休業いたします。

 

開廊日時: 金~日曜 12~19時

 

□レセプションパーティー: 会期初日 12.19 土 18時~

 

□ アーティストトーク: 1.9 土 18時~

 

□としあけお茶会: 会期最終日 1.24 日 17時~

(としあけお茶会は参加費500円となります。)

 

 

会場:創治朗 -contemporary art gallery-

664-0851 兵庫県伊丹市中央6-1-33 中本ビル2F

 

tel:072-773-3910

mail:gallerysojiro@gmail.com

web:http://gallerysojiro.wix.com/sojiro

 

 

——
 


■趣旨

このたび創治朗では、大槻香奈(Kana Ohtsuki b.1984) の個展『おやすみからのおはよう』を開催いたします。主にセーラー服の少女ポートーレート作品で知られる大槻は精力的に作品発表を継続しており、2015年も数回のグループ展・個展を開催しました。
中でも11月に東京アートコンプレックスセンターにて開催された個展は規模の大きさとテーマ設定のシリアスさにおいて現在の大槻香奈の創作のほとんど全貌が反映されていた展覧会でした。
その次の個展である今展では、年末年始をまたぐ会期というニュアンスもある『おやすみからのおはよう』というタイトルから着想して、眠ることが意識や時間に及ぼす作用や、おやすみ/おはよう という挨拶の親密さなどを手掛かりにステイトメントを構成しました。以下でご覧ください。



眠りにつくとき、次に目を覚ます朝には、どんな世界を見たいと願っているだろうか。
眠りの時間には意識がない。意識が退いて隠れていた無意識が現れ自由に振る舞う。
それは夢だ。夢には、場面や話の整合性やつながりが成り立たない不条理な場合が多い。

夢が、意識がとらえていた連続的な情報を無意識のフィルターを透かして整合性もないままに途切れ途切れのばらばらな断片として取り出すのと同じく、
眠りの時間は目覚めている時間の連続性にくさびを打ち、眠りに意識を預けていた時間を現実から欠落させるかのように、
目覚め - 眠り - 目覚め の並びを別々の時間軸を橋渡しするように、切断しつつ連結する。

目が覚めたら思いもよらないことが起きていたという物語表現は多いが、これは眠っては目覚めるという流れが間に欠落を挟んで隔絶された時間であるためだ。


大槻香奈は近作から<フォトドローイング>と称するシリーズを制作し始めた。 
これは彼女の家に長年保管されていた家族の古い写真――
よく祖父母の家の箪笥にしまわれていた思い出を誰もが持っているような―― の上に直接ドローイングを描き込み、
写真の中ではそのような姿をしていなかったはずの人物が大槻作品に特有の女の子の姿に変わっていたり、また本来人物が居なかった風景に人の姿が描き加えられる場合もあるというシリーズだ。

大槻はこの方法を、古い写真の時代へのある種のタイムスリップのような感覚がある、と語った。
あるいは元の写真内では一様にまとまっていた時間を、絵が描き加わることで一つの時間として固定できない、どことも知れない時間(パラレルワールド?)に置き換えたとも言えるかもしれない。

ここでは夢の機能のように、一つだけの時間、ひとつながりの時間を切ったり解体するようなニュアンスが作品に含まれている。

この連続性と統合性がほぐれてしまう性質は実のところ大槻作品全体から発見でき、タブロー、ドローイング、コラージュ、割れた鏡、さなぎのカプセル、粘土の小さな立体、作品外部を装飾する雑貨、さらには前回個展『わたしを忘れないで。』の展覧会場での壁面のタイトル文字にデザインされた鏡の断片が使われていたというような、過剰にも思われる作品素材の拡張性・増殖性からも顕著にうかがわれるものだ。

この非統一的/複数的な多様な作風を束ねるはずである大槻香奈の作品のただひとつ確固とした中心的モチーフ <少女の姿>が、しかしその少女の無意識を通して世界を眺めたかのように、夢の無意識の時間が現実を切り分けると同様、少女の虚無を感じさせる瞳の色が世界を非中心化しばらばらな断片に砕いていく。

それは光を映さない瞳の少女が世界の姿を見ておののき、世界を自らの内部で解体しなおしているようにも思える。
(この目線に立つと、作風の中心を成す存在の少女こそが中心/単一/連続を打ち消す者となる。拠り所としての中心は予め喪失されているのだ。)


そうして、それは一人きりの風景ではなく、少女期の誰もが感じうること、誰にも起きていることとして大槻作品の中では常に<複数形>で提示されている。
必ず何人も並んでいるポートレートの少女、「ずっといいこ」の群れ、さなぎのカプセル群に見られるように。


時間軸は切り分けられ、複数ある。その時間の中をたくさんの少女がループし続けている。
それは見失ってしまったものを探し続ける旅のようでもあるし、反対に離れたくない時間の位置にとどまるために繰り返しているようでもある。


眠りにつくとき、次に目を覚ます朝には、どんな世界を見たいと願っているだろうか。

ばらばらにほぐれて繰り返される時間たちの不確かなさまよいの中で、<おやすみからのおはよう>という呼びかけは、とても親しい言葉、脆いつながりを支える言葉に響くはずだ。

そんなふうに、霧散していく時間の奔流の中で、<おやすみ>で別れ<おはよう>で再会できるような、日常の退屈さと隣り合わせのささやかな奇跡を願っているのではないだろうか。



この機会にぜひご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

(text:二見正大)

 

 

——

 

■大槻香奈 Kana Ohtsuki

 

1984 年生まれ。京都を拠点に活動する美術作家。2007 年 より活動をスタートし、国内外問わず様々な展覧会に参加。 現代日本を「蛹」的に捉え、そこで生まれゆくものと死に ゆくもの、またそれらを内包する世界の姿を客観的視点で 描く事を試みている。
代表的シリーズであるアクリルで描かれた少女のポート レートをはじめ、抽象的表現、立体、イラストレーション など、年々表現の幅を広げている。
WEB SITE:http://ohtsuki.rillfu.com

 

 

竹村寛来 「去来する燐光」

2015年11月28日(土) - 12月13日(日)

■竹村寛来 「去来する燐光」

 

会期:11月28日(土)~12月13日(日) 

 

開廊日時:金曜~日曜 12~19時

 ※今展より、創治朗の開廊日を 毎週 金曜から日曜 に変更いたします。木曜は休廊となります。

  お間違えなきよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

休廊日:毎週 月~木曜

 

会場:創治朗 Sojiro -Contemporary Art Gallery-

 

〒664-0851 兵庫県伊丹市中央6丁目1‐33 中本ビル2F
(阪急伊丹駅より徒歩約6分・JR伊丹駅より徒歩約9分)
 
tel:072-773-3910
mail: gallerysojiro@gmail.com

 

 

【オープニングレセプション】 11月28日(土)18:00~

 

【ワークショップ:日本画塗り絵体験】 11月29日(日)10:00/14:00/17:00 (参加無料)

 

毎週 月~水曜に開講しております創治朗 絵画教室にて、火・水の日本画教室講師も兼ねております竹村寛来が日本画制作体験のワークショップを 会期中の11月29日に実施します。お気軽にご参加ください。

 

 

 

■趣旨

 

このたび創治朗では、竹村寛来 (Hiroki Takemura, b.1983)の個展を開催いたします。

 

竹村は、京都造形芸術大学在学時より日本画を専攻しました。

日本画家としての活動の中で特定の固定された場所や集団に帰属しなかった竹村は、日本画的な伝統が課す表現様式からも距離を置き、自身の存在根拠を探って孤独な探求を続けました。

 

竹村は、バイクでツーリングを行なった際に見た夜の道路、そこを横切っていく車両群のライトに作品モチーフの着想を得ています。

一見して、夜の道を寡黙で静謐なタッチで描いたという描写の第一印象が了解されますが、その一層下に、モチーフそのものの描写を越えて広がる精神性の表現を忍ばせています。

 

その深部に降りていくときに、作品の意味内容は言葉による説明では本質的に置き換え不可能であり、かつ言葉は不要かもしれないという認識を竹村は持っています。

それに鑑み、今展の紹介は、以下、いくぶん詩的な、作品そのものを語らず、その周囲を取り巻く <ニュアンス> や <気配> をお伝えするための文体に置き換えます。

 

 

人は記憶を蓄える。

 

記憶は絶え間なく降り積もるが、その中で、たとえば十年以上の歳月を越えても、ふとした拍子に何度も甦って反復され続けるような記憶がある。

 

それを何と呼ぶだろうか?

単に強い記憶と言ってもいいし、印象深いこと、懐かしさ、心に残る思い出と言ってもいい。
あるいはトラウマのように、負の要素や傷が残ることもある。

 

記憶が生まれるのは、人がさかのぼることのできない時間軸を生きているからだ。
空間の中をある程度思い通りに移動していくことが可能なのとは違い、時間の中では意志での移動ということは一切不可能で、誰しも、一定の速度で未来へ流れてゆくという時間の条件に身を任せる以外に無い。

 

過ぎた時間を思い返すために記憶を手繰る。

 

記憶は頭の中に焼き付けられ、それを印象づけるのは、その記憶を生んだ場面の光景、そこで見聞きしていたこと、そこで触れていたものなどの象徴的断片である。
これらは謂わば、そこに存在していた物質に、記憶が焼き付いたのだと解釈することもできる。

 

記憶を、最もそれに沿う形で物質に焼き付けられる形態の一つが絵画である。

 

たとえば、死期の近い人や動物の姿を絵に描いた。間もなくその者は死に、しかしその絵は、永遠は望むべくもないにせよ、その死期をしばらくは越えてその姿を画面に留める。

 

写真でなら、より克明な記録、事実に即した姿の写し取りが可能なのだろうが、その記憶に纏わる想念を遺そうとするならば、一つ一つの筆遣いにいかに心の陰翳を刻み込めるか賭けることのできる絵画にこそ、果たせる役割がある。

 

記憶を持つ者が生きようとして辿った道、記憶の堆積がそこを通り抜けたことをこぼれ落ちた痕跡が示している道。そうした道が、これから歩むべき道を探す者、白紙の上に記憶を書き込みながら道を探す新たな者たちへの地図にもなる。

 

かつて生き、様々な記憶を身に宿しながら、やがて散り散りに闇の中へと走り去って行った者たちの気配が響かせている谺。

 

その残響を聞き返そうとすること。
その光の尾を捉え返そうとすること。

 

それは、暗闇の中で微かな道を刻み続ける記憶たちと共鳴し並走すること、それらが辿った軌跡を描くことである。

 

 

この機会にぜひご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

 

(text:二見正大)

 

 

 

■竹村寛来 Hiroki takemura


1983年 伊丹市生まれ


京都造形芸術大学 卒業
現・宝塚アピア文化サロン日本画カルチャー講師
宝塚山本ガーデンクリエイティブ日本画講師

 

■個展

2013 (宝塚市) 

 

 

■受賞歴
日展 入選
日春展 入選

 

 

中山いくみ HAL(L)O! SOMEWHERE

2015.10.3 sat - 11.22 sun

□「水滴の肖像-K」  布、デジタル画像、プリント/S20号 725 × 725 mm/2015年

中山いくみ 『HAL(L)O! SOMEWHERE』

 

会期: 10月3日(土)~11月22日(日)

 

開廊日時: 木~日曜 12~19時

休廊日: 毎週 月~水曜

 

会場:創治朗 Sojiro -contemporary art gallery-

 

〒664-0851 兵庫県伊丹市中央6丁目1‐33 中本ビル2F

(阪急伊丹駅より徒歩約6分・JR伊丹駅より徒歩約9分)

 

tel:072-773-3910

mail: gallerysojiro@gmail.com

 

 

【オープニングレセプション】

10月3日(土)18:00~

 

【トークショー】 ※「アート系トーク番組 art air」と共同開催。詳細は下記にて

11月8日(日)15:00~

 

 

■趣旨

 

このたび創治朗では、中山いくみ(Ikumi Nakayama, b.1989)個展 『HAL(L)O! SOMEWHERE』 を開催いたします。

 

展覧会タイトルに見られる“HAL(L)O!”という、一風変わった挨拶の表記法は、写真用語のハレーション(強い光が当たった部分の周囲が白くぼやけて写る現象)を意識しており、その現象の際に見られる白飛びした光輪(=HALO)を、HALLOとダブらせてタイトルに用いています。

中山の作品ではたびたび光の反射・反映を題材に取り上げており、ハレーションやHALOという光学現象を指す言葉は、作品のもつ光との関連性を示すために選ばれました。

 

中山の主要なシリーズである「水滴の絵画」は、以下のような特徴を持っています。

曇った鏡面にぼんやりと人物の肖像が浮かび、その上に数多くの水滴が散らばっている――目を凝らすと、その微細な水滴の中にだけ、相貌を判別できるくっきりとした肖像が映り込んでいる。しかし水滴はレンズのように光を歪曲させるため、そこに映る肖像は極端に歪み、ぼやけてはいないものの、正確な実像は見定めることができない――

モチーフの本体は遠くに霞み、その派生物である水滴の反映は無数のバリエーションに分化しながら微生物のように増殖してゆくかのようである。

 

それはあたかも、一次情報の本体が判別し難くなり、副次的な情報がその本来の姿をゆがめられながら拡散してゆく、いまの情報環境の在りようを暗喩しているかのようでもあります。

いわば拡散(=大量コピペあるいは改変引用)されうる情報というのは強い光源のようなものとして存在し、その発光や反射が生むハレーション(強すぎる光による白飛び)は周囲の物の重要な細部を見えなくさせるほど過剰な光を浴びせる。物体は映り込みを、情報は拡散を繰り返し、そのたびに元々の姿は捉え難く変容させられてゆく――

光の反射によって見えなくなってしまうもの、あるいは逆に、何かに何かが映ることによって新たに気が付くもの。中山はそうした「反射」や「映り込み」という現象を繰り返し描き、それが生む様々な効果を見る者に考察させます。

 

今展は、今年6月に中山の出身地である広島県の gallery G で開催された個展『HAL(L)O! HIROSHIMA』の姉妹編のような位置付けとなっています。

前回は自身の故郷であるゆえの特別さもあってHIROSHIMAという地名へ HALLO!と呼びかける展覧会名を冠していましたが、今展ではその広島を離れ、会場となる創治朗が所在する伊丹という、中山にとって未知なる土地を訪れます。そこでの展覧会名は『HAL(L)O! SOMEWHERE』となり、特別な固有な場所としてとらえていた故郷から旅立ち、どのような場所へも、いまだ知らぬどこか(SOMEWHERE)へも発信できる表現、その対象がどんな場所であっても自身が伝えるべきことを見据えた普遍的な表現を探って展開していきます。

 

この機会にぜひご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。                          (text:二見正大)

 

 

 

【オープニングレセプション】

10月3日(土)18:00~

 

【トークショー】

11月8日(日)15:00~

インターネット配信の「アート系トーク番組 art air」によるYoutube公開収録・生配信を実施します。

公開のため、当日ギャラリーにてトークをご覧いただけます(10~15人程度定員)。ぜひご来場ください。

 

【出演】

辻大地(art air 代表)/杉村順(美術家)/中山いくみ(美術家)/山下寿水(広島県立美術館 学芸員)

 

 

■『アート系トーク番組 art air』 とは・・・

ネット配信をとおしてアート、大衆文化、子供の視覚表現について考察&発表している動画コンテンツです。

アーティスト、ヨーゼス・ボイスが提唱した「社会彫刻」という考え。

芸術をとおして「社会」や「教育」を改革していく概念を再解釈して、「社会メディア・ペインティング」としてトーク番組を運営しています。

(代表 辻大地氏)

http://artfun.web.fc2.com/ustream.html

 

 

 

■中山いくみ Ikumi Nakayama


略歴
1989 広島県生まれ
2012 尾道大学 芸術文化学部美術学科 油画コース 卒業


個展
2015 Gセレクション 中山いくみ 個展「HAL(L)O! HIROSHIMA」 ギャラリーG(広島)

2012 トーキョーワンダーウォール2011 

『中山いくみ展 見えない壁ーInvisible wall』

東京都庁 (東京)


グループ展
2015 "KITAJIMA/KOHUSKE"#09 ~椀Q松山翌の噂~ カタ/コンベ(東京)
2013 Winter Show   KOKI ARTS (東京)
2013 NEW CITY ART FAIR OSAKA 阪急うめだギャラリー (大阪)
2012 ART AWARD NEXT2012 東美アートフォーラム(東京)
2012 アーティスト・アジト ?ミラー・ワールド編? GEISAI Gallery(東京)
2011 トーキョワンダーウォール公募2011入選作品展 東京都現代美術館


受賞
2012  尾道大学 学長賞
2011 「トーキョワンダーウォール公募2011」 トーキョーワンダーウォール賞
2006 「第58回広島県美術展」 優秀賞


パブリックコレクション
ゲンロンカフェ(東京)

 

 

2015.8.8 sat - 9.20 sun

Yuka Umino  ‘pale blue spillage’

 

□「Sofa」/キャンバス、アクリル、メディウム、カラーファウンデーション

/F20号 606 × 727 × 28 mm/2015年/¥80,000

■海野由佳 pale blue spillage

 

 

会期: 8月8日(土)~9月20日(日)

開廊時間: 木~日曜 12~19時

休廊日: 毎週 月~水曜

 

 

会場: 創治朗 sojiro -Contemporary Gallery-

664-0851 伊丹市中央6丁目1‐33‐2F

(阪急伊丹駅より徒歩約6分・JR伊丹駅より徒歩約9分)

 

tel:072-773-3910

mail:gallerysojiro@gmail.com

web:http://gallerysojiro.wix.com/sojiro

 

 

 

【趣旨】

このたび創治朗では海野由佳 個展 'pale blue spillage' を開催いたします。

 

海野由佳(Yuka Umino, b.1989)は京都嵯峨芸術大学専攻科洋画の在学中より油彩およびアクリル絵画の制作に取り組み、当初は風景を主要モチーフとして厚塗りによる絵具の用法を追究したのち、モチーフを大きく転換し人物を主題にした画風に移行しました。

 

海野の描く人物像は「ある陶酔的な感覚に沈んだ状態」を表しており、抱擁し合う二人の人物(異性・同性どちらの組み合わせも)、裸体もしくは半裸体の女性 が主なモチーフを占めています。

作品の設定として一様に言えるのは、 身体を使う/身体感覚のフィードバック/身体への客観視 が主な要素であることです。

 

抱擁する人物同士はきわめて親密な状態にあり、同様にセクシュアリティを感じさせる裸体や重なり合う人物の像も、その画面内人物の身体感覚は高揚し切迫したものであることが想像されます。 (身体の使用)

しかし一方で、そのような熱中した状態にありながら同時にきわめて醒めた意識で、身体の軸からずれた精神が傍らから自己を眺めるような冷ややかな外部的認識も並走していることに気が付きます。(身体感覚のフィードバック)

それを海野は身体という器からこぼれ出る精神ととらえ、かつそれは特殊で一瞬のものでもなく、普遍的で日常的に経験していることであると考えました。身体と精神とは完全には一致せず、互いの軸がずれたり揺れ動くことが常である。(身体への客観視)

この感覚が海野にとって重要なのは、このような自己客観を得たとき「そこに私の身体が在る」ということを発見し、自身が生きている存在である証をそこに見出しているためです。

 

官能的感覚がもたらす忘我と理性的感覚による醒めた認識、これら両極がひとつの陶酔の中に併存した雰囲気が海野の絵画画面を満たしており、そのとき画中の人物の身体からこぼれ出る精神の感覚を、絵の背景空間に広がる、特徴的なペイルブルーの色彩で象徴しています。ペイルブルーの流れ出したもの――今展の題名は、このような海野の色彩が持つ意味合いから名付けられました。

 

この機会にぜひご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。    (text:二見正大)

 

 

 

■海野由佳 プロフィール

 

1989 愛知県 出身

2012 京都嵯峨芸術大学専攻科洋画 卒業

 

[主な展覧会]

 

2014

Phase Transition / 2kw gallery ( 大阪 )

思考する視線 / Art Space MEISEI( 京都 )

Exhibitionism / Gallery創治朗・SANSEIDO GALLERY ( 兵庫 )

 

2013

新作展 / gallery 1 ( 神戸)

とよヌー / イロリムラ[89]画廊 ( 大阪)

near/far / Art Space MEISEI ( 京都 )

Container Drawing Project / 神戸ビエンナーレ アートインコンテナ ( 神戸 )

 

2012

one room'12 / 京都嵯峨芸術大学クラブBOX ( 京都 )

第40 回 京都嵯峨芸術大学 卒業制作展 / 京都市美術館

<個展> ここに一つの存在がある / gallery 1 ( 神戸)

 

2011

第64 回 関西新制作展 新作家賞 受賞/ 原田の森ギャラリー( 神戸)

UMINO Yuka × KAWAGUCHI Yoko exhibition / 京都嵯峨芸術大学 アートプレイスU2( 京都)

Painting Point / 同時代ギャラリー( 京都)

 

2010

第38 回 京都嵯峨芸術大学 卒業制作展 同窓会賞 / 京都市美術館

グループ展 「ただ見てもらいたいんだよね。」 / フリースペースAKIKAN( 京都)

第74 回 新制作展 入選 / 国立新美術館( 東京)

<個展> green / 京都嵯峨芸術大学 アートプレイスU2( 京都)

2015.6.20 - 7.26

西ノ田 ‘ラビラント・キューティカ’

 

□「相対性理論武装」 デジタル画、キャンバスにジークレープリント、アクリル水彩他 841 × 1189 × 300 ㎜ 2015年

 

 

■西ノ田 『ラビラント・キューティカ』

 

会期: 6月20日(土)~7月26日(日)

開廊時間: 木曜~日曜 12時~19時

休廊日: 毎週 月・火・水曜

 

 

【趣旨】

西ノ田 (Nishinoda b.1988) は京都市立芸術大学油画専攻科での在学時代にキャラクターイラストレーションの潮流を反映した絵画制作を研究し、卒業後はソーシャルゲームのキャラクターデザインやライトノベル装幀画等を職業として手掛けています。

 

絵画作家としては2013年より創治朗と活動を共にし、神戸アートマルシェ2013、ULTRA006・007 への出展、個展『Palm Rabbit』を開催しました。

 

今回の個展は初個展である2014年秋の『Palm Rabbit』とその後のアートフェア、グループ展での経験と評価を経て、作品づくりの中でアップデートされた要素を総括します。

 

西ノ田の出発点はイラストレーターであり、彼が手掛ける職業上でのイラストレーション分野には商業製品の素材となることから来る条件的制約と、画風においても全体の平均値のようなものが存在しています。

西ノ田の作品の美術的価値は、そのようなイラストレーションにおける平均値の枠組みから逸脱してしまう余剰的性質の方にこそ、作家の本質が多く反映されているという点です。

 

絵画制作において西ノ田がとる方法は、線描ドローイングが画面全体に展開することから始まり、モチーフの中心的位置となる少女キャラの姿もその<線の流れ>の中から浮かび上がってきます。

線そのものが生命力を発揮して背景描写の下地となる交錯した線の集合を描き出し、その分割面への着彩作業を経て、幾何構成/色面構成の方法に近いかたちで背景を成す紋様が造形され、そこに細部のディテールが加えられることで仕上がっていきます。

 

この方法には大いに即興的な面があり、設定・ディテールの優先度合いが大きいイラストレーションとは逆行するもので、ここにも西ノ田の<逸脱>がうかがわれます。

 

また素材面では、<デジタル=PC上でのデータ描画> を従来の <アナログ=生の画材> に対して特殊なものとしては捉えず、自身にとって最も自然に扱える技法としてデジタル作画を主に用いており、

その上でデジタル画を高精細にキャンバスプリントしたものへの手作業による追加制作や完全アナログの作品も交えての展示で、デジタル/アナログという、分断と対立で語られることが多い二元論をゆるやかに融和させ、イラストレーションの文法を飛び越えデジタル作画を柔軟に駆使して、いま現在アクチュアルな<絵画>とは何か、その可能性を探ります。

 

今展の題名 「ラビラント・キューティカ」 は、ほぼ造語に近く、西ノ田の作品に頻出するいくつかのモチーフを含意しています。

 

“ラビラント” は迷宮を意味する ラビリンス のフランス語発音であり、作品の背景にある紋様状の建物などの描写、そして同時に “ラビット” の音も重ねており、絵の中に出てくるウサギ耳の少女の存在を仄めかします。

“キューティカ” は英語の cute に、その性質を持つものを表す接尾辞 -ica が付加されており、上記2語の組み合わせで、かわいい姿の少女キャラの背景で謎めいた迷宮が渦巻く作品世界を反映しました。

 

この機会にぜひご高覧賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

創治朗 二見正大

 

 

 

■西ノ田 プロフィール

 

1988 京都生まれ

2012 京都市立芸術大学油画専攻科 卒業

 

[主な展覧会]

2010 「wassyoi #」 (0000Gallery / 京都)

        「exhibition – Final」 (大丸心斎橋店 / 大阪)
        「Wassyoi +」 (0000Gallery / 京都)
        「カオス*ラウンジ(春)」 (ビリケンギャラリー / 東京)
        「西ノ田×ひるき×竹村文宏 未確認飛行三人展」 (京都2012 「カレンダー展」 (ubeful / 京都)
2013 神戸アートマルシェ (神戸メリケンパークオリエンタルホテル)

        ウルトラ006 (青山スパイラルガーデン / 東京)
2014 個展 「Palm Rabbit」 (Antenna Media / 京都)

        ウルトラ007 (青山スパイラルガーデン / 東京) 
2015 「プラレシオ」 (Antenna Media / 京都)

 

bottom of page